神奈川NIEミーティング

NIEミーティング議事録 2014年10月17日(金)

NIE全国センター会議室場所 NIE全国センター会議室
参加者数 18名
司会 鎗分逹文(神奈川新聞社)
記録 國分誠(横浜国立大学大学院生)
内容
1.参加者による「本日の新聞」紹介
新聞の未来について、御嶽山の捜査打ち切り、朝日配達エッセイコンテスト、気仙沼漁港のいま、いじめの数過去最多、エボラ出血熱のアメリカでの感染、イスラム国への空爆など
2.本日の報告
報告者:坂田泰美先生(横浜市立緑園東小学校)
4年 総合的な学習の時間「相鉄にかかわる人を取材して、新聞を書こう」
5年 国語科「新聞を読む」
6年 国語科(朝活動)「新聞記事を要約しよう」「新聞記事を紹介しよう」

実践の報告

 緑園東小学校では、今年度の9月からNIE実践指定校としての取り組みを始めたばかり。児童の中には大人向けの新聞を読んだことがない子が多い。授業としては、4年生から6年生を対象にNIEを行っている。また、重点研究として国語科を取り上げており、学校図書館の活用と図書館司書との連携を重視しながら、「主体的に考えを深める子の育成」を目指している。

@4年 総合的な学習の時間「相鉄にかかわる人を取材して、新聞を書こう」
 まず図書館司書から新聞の読み方・書き方についてのレクチャーを受けた。次に取材するテーマを決めた上で、相鉄車両センター、ステーショントレーニングセンター、緑園都市駅へ見学に行った。そして、取材メモを元に記事のレイアウト、見出し、リード文、写真などを考えながら、新聞を書いた。
 第一記事を大きくすることや見出しの重要性については、意識して自分の新聞を書く児童が多かったが、写真の効果的な活用やリード文については自分の新聞に取り入れることが難しく、課題が残った。

A5年 国語科「新聞を読む」
 まだNIE指定校になる前の実践のため、学校司書に新聞ライブラリーから読売新聞の東京版と大阪版から持ってきてもらった。その二誌に学校で取っていた朝日子ども新聞、神奈川新聞も加えて、それぞれの違いを読み取らせた。
 子どもからは、「子ども新聞は自分たちの目線で分かりやすい言葉を使って書かれている」「リード文を読めば新聞全部を詠まなくても内容が分かる」「東京と大阪の一面の違いは記者の思いが出ている」などの意見が出た。また、授業後に「読むだけではなく実際に新聞を書いてみたい」という声も上がっている。
 社会科や理科の学習の際に新聞から情報を収集している児童がおり、本単元の学びが情報収集能力育成の大きな一歩になったと考えている。

B6年 国語科(朝学習)「新聞記事を要約しよう」「新聞記事を紹介しよう」
 国語の教科書上では6年生になると新聞に関する単元はなくなってしまうが、週に一度国語の朝学習の時間に15分間、NIEを行っている。具体的には、担任が新聞記事を選び、その感想を書かせる活動やその記事を要約する活動を行っている。中には自分で記事を持参し、担任が選んだ記事とは別の記事で活動を行うような児童も出てきている。
 また、「平和のとりで」という意見文を書く単元でも新聞を活用している。

C図書館活用と学校司書連携
 言語活動通り・・・新聞記事や模造紙にまとめた資料を廊下に掲示している。
 情報ファイル・・・授業に関連する記事を司書がスクラップしている。

(2)質疑応答

Q学校司書について
・2013年10月に横浜市は学校司書の導入を始めた。将来的には全校配置になる予定。自治体によって異なるが、横浜で学校司書になるのに資格は不用であり、経験も条件ではない。緑園東小学校には第一期の導入で経験豊富な司書が配置された。
・通常、図書の整理、読み聞かせ、国語の授業での平行読書などが学校司書の主な業務だが、緑園東小学校では、国語での新聞活用や、社会や理科での資料活用の際にも学校司書との連携を図っている。
・NIEでの司書との連携について、司書は情報活用に関してはプロだが、新聞に関しては新聞記者が居るのだから、直接新聞記者に聞くということがあっても良かった。

Q4年生で新聞を書き、5年生で新聞を比べ、6年生で新聞の要約を行うというのは、子どもの発達に沿っているのか?
・書くというのはエネルギーが必要なこと。重要なのは伝えるということなので、写真にコメントをつけるようなものから始めて、「実際の新聞ってどうなっているの?」という疑問を子どもが持ったら、新聞のようなものを書いてみようということでも良いはず。

Q新聞を書く活動でインタビューを行う際、質問項目はどうなっているのか?
・予め用意した質問をその場で言うだけではなく、見学先で感じたことを率直に聞くということが大切だろう。
・模範生のような質問項目は、その熱心さが嘘っぽい。それはおそらく本当に聞きたいことではないだろう。

Q新聞の面白さについて
・学習指導要領に新聞が登場したことで、かえって新聞の面白さが教科ごとに分断されてしまっている。
・受験のために新聞を読む、学力を上げるために新聞を読むということではない。
・新聞を取ってない家庭の児童においては、家庭で新聞と触れる機会がないからこそ学校で新聞の面白さと出会わせることが大切。
・総合が「協働」や「探求」にしばられてしまうようにではなく、大きな枠組みで児童が学びたいことを勝手に学ばせるような「遊び」が必要。

(3)まとめにかえて

 以上のようなやりとりがあった。このやりとりで印象的だったのは、新聞の面白さが教科によって分断されてしまっている話だ。国語科では書き方指導の教材として、社会科では調べものの媒体として使われることが多い新聞だが、伝える内容が決められていたり、調べる内容が決められたりしていると新聞の面白さは限定されてしまう。子どもが本当に知りたいこと、伝えたいことに出会ったとき、教科の枠組みを超えた子どもの学習が現れるのではないか。そのような可能性がNIEにはあるということを今回のミーティングを通して考えさせられた。