実践校授業見学
NIEを意識した教科授業 −社会・国語−

 横浜国立大学附属横浜中学校    


 NIEの継続実践校であり、新聞を活用した授業が盛んな横浜国立大学附属横浜中学校で06年11月30日、NIEを意識した教科授業として「時事問題作文講座」(選択社会)と、新聞記事から擬音語・擬態語をイメージする授業(国語)が行われました。その授業風景を紹介します。

■時事問題作文講座

1 教 科 選択社会

2 日 時 2006年11月30日(木) 5、6校時(13:20〜15:00)

3 学 年 2、3年(5人)

4 指導者 三藤あさみ 教諭

5 新聞を活用することのねらい
 ・現在起きている社会問題に着目し、何が問題なのかを考えることを通して、自分なりに考えを深める。
 ・深められた考えを「よりよい社会にするためにはどうするべきなのか」という視点から、新聞投稿や作文コンクールに投稿し、具現化する力を育成する。

6 授業のおおまかな流れ
 (1)新聞に目を通し、一週間以内(程度)に起きたことで興味を持った内容について読みとる。また、それに対する自分の意見をまとめて発表の準備をする。
 (2)一人ずつ、記事を提示してそのあらすじと問題点、自分の考えを発表する。
 (3)聞き手から不明な点があれば質問を受ける。
 (4)全員発表が済んだら他の人の発表内容に関して意見を交換する。
 (5)教師が全体を通して必要があれば問題点に関する知識を補足する。特に作文できるようなイメージを作れるように支援する。
 (6)5校時で話し合った内容をもとにして、6校時で新聞投書欄や作文コンクールの投稿文をまとめる。

【見学リポート】
 この授業を選択しているのは5人の女子生徒。情報源は新聞だけでなく雑誌なども対象にしているが、最新の話題を毎日提供する媒体として、生徒全員が自宅で購読している新聞を“教材”として使っていた。
 この日扱った記事は生徒によって違っており、新型インフルエンザ問題、不正入札(談合)是正の知事チーム会合、医療関連フォーラム、子育てをめぐる諸問題、北京五輪のスポンサー問題などさまざまで、一つの記事だけを使う生徒や、複数の記事を組み合わせて使う生徒もいた。

 生徒らは記事を読み込んだ後、一人ずつ書かれている内容を要約して発表し、自分の感想・意見を皆の前で発表した。
 新型インフルエンザの問題を扱った生徒は、アジアを中心に大流行の懸念が広がっている中で、治療薬「タミフル」の備蓄は必要数の半分にとどまっているが、薬をどういう人に優先的に服用してもらうのか国民のコンセンサスができていないうえ、ワクチン開発には最短で半年もかかる実態を記事から紹介し、「薬は市民を最優先に使って欲しい」と訴えた。
 談合問題では、知事チームが電子入札などの導入で制度を高度化する意見を出したことについて触れながら、生徒は「公共事業を中心にし、談合しなければ仕事が取れない企業もある。企業で働く人たちのことも
考えて制度を作った方がいい」と意見を述べた。これを受けて教諭は、「公共工事のお金は誰が出しているかを考えると、1円も無駄にはできない。それが財政の腕の見せ所であることを考えて」と、根底に税金の存在があることを示唆し、生徒の考えを“軌道修正”した。生徒同士でも感想や意見の交換を行って前半が終了。後半は教諭の助言や生徒の感想を生かした形で、各自が新聞投稿用に作文を書いていた。
 
【授業見学の感想】
 この授業で生徒が使う記事のテーマは多岐に渡っており、それぞれの生徒が持つ考えを作文化するために適切な助言をするには、教諭が時事問題について該博な知識を持ち、生徒の考えに即応できなければ成り立たない高度な授業であると感じた。
 この授業は作文講座だが、自分の考えを「書くこと」はもとより、記事内容を正確に「読むこと」も重要であり、生徒が記事を正しく読解しているかを互いにチェックし合う時間を設けることも必要に思えた。
 また授業は“自由課題”であり、他の生徒の興味・関心の違いに気付き、知識や視野が広がるメリットがあるが、その時々で問題になっているテーマを“統一課題”とし、学習を通じて互いに認識を深めるケースも生まれ、学びが一層深まるのではないかと感じた。
 授業で仕上げた作文はコンクールや新聞投稿に応募しているというが、見学の時点では入選・採用の実績はないとのことだった。しかし、時事問題を新聞記事から読み取り、自分の考えを文章にまとめる学習経験は、今後の学校・社会生活のさまざまな場面で大いに役立つと感じた。


■新聞記事から擬音語・擬態語をイメージする

1 教 科 国 語

2 日 時 2006年11月30日(木) 6校時(14:15〜15:OO)

3 学 年 1年

4 指導者 松田 裕行 教諭

5 新聞を活用することのねらい
 ・新聞に書かれている記事(情報)を、目的を持って読み理解する力を育成する。
 ・文章以外(写真、広告など)も含めた新聞紙面上の情報をもとに、擬音語や擬態語をイメージすることで、日常の中に生きた言葉としての語感を磨く。

6 授業のおおまかな流れ
 (1)生徒一人一人が、配られた新聞に目を通しその情報からイメージできる擬声語・擬態語を出してみる(はじめに指導者が例を示す)。
 (2)4人程度の小グループで、情報(記事など)とそこからイメージした擬音語・擬態語を、お互いに発表し紹介する。
 (3)グループの中で一番紹介したいものを1つ短冊に書き、いくつかの班について発表してもらい意見交換をする。

【見学リポート】
 この授業で使用されたのは当日(11/30)付の神奈川新聞で、一紙をまるごと使って、記事の中から擬音語・擬態語をイメージし、その内容と具体的な語を発表しようというもの。
 導入では、教諭が前時で指導した擬音語・擬態語の定義について、黒板に張り出して再確認した後、親子ウオーキング大会の記事から擬声語「てくてく」を、リクライニングチェアの広告から擬態語「のんびり」を例として示し、語を書いた短冊を黒板に掲示した。

黒板の張り出しを見る

 生徒らは各自、新聞記事からイメージできる擬音語・擬態語を、連想のきっかけとなった記事とともにノートに書き出していった(所要時間約20分)。その後、3〜4人の小グループに分かれ、各自が連想した語を提示し、その中から一語を選び出して短冊に書き、黒板に掲示した(同約10分)。

 競走馬が走る写真を見て「パカパカ」、機械で吊り上げられる冷凍マグロの写真を見て「ウィーン」、ボクシング選手がシャドートレーニングに励むカラー写真を見て「ブンブン」など、いくつかの班の代表が、連想した語を発表していった。本時はここで終了し、次時にまとめが実施された。

【授業見学の感想】
 新聞一紙をまるごと使い、記事から擬音語・擬態語を連想するという試みはユニークで、自分でも生徒と同じ新聞を使って試してみた。一面を彩るイルミネーションの写真を見てすぐに思い浮かんだのが「キラキラ」。第二社会面トップ記事「保水性ブロックで屋上の表面温度が16度減」の文章を読んで「ひんやり」など…。記事から擬音語・擬態語をイメージする際に、写真を見て連想するのは瞬時にできて簡単だが、文章を読んで連想するのは時間を要し、国語的なセンスや技術が要求されることを実感した。
 生徒らの学習の様子を観察したところ、その大半が写真から擬音語・擬態語を連想していた。 そんな中で少数ながら、前月の鉱工業生産が過去最高の伸びを示した記事に「ドバドバ」(強引で
はあるが)、最終戦での勝利を誓って練習に励むJリーグ横浜FCの記事に「めらめら」などと、写真ではなく文章を読み込んで擬音語・擬声語をイメージした生徒もいた。生徒らが選び出し、短冊に書いて発表した擬音語・擬態語の中に、文章を読んで連想したものが落とされていたのが、いささか残念な気がした。
 次の機会があれば、授業の導入部で教諭が例を示す際に、写真から連想するだけでなく、文章だけの記事から擬音語・擬声語をイメージする手本も示すと、記事を「見る」だけでなく「読む」ことを促し、生徒の学習の質がより深まるのでは、と思った。

(推進協事務局 菱倉昌二)

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